【シカゴ8日時事】◎波乱の小麦相場の行方に注目
シカゴ商品取引所(CBOT)の穀物相場は今週、小麦相場の騰勢が一段と強まり、5日連続のストップ高となる中、トウモロコシと大豆は一時的に追随する動きもあったが、徐々に利食い売りに押され、高値圏でのもみ合いにとどまった。小麦市場では来週初めから値幅制限が拡大される。これを受けて、来週はまず小麦相場がどの水準で一服、反落するかを見守り、小麦相場が落ち着きを取り戻してから、それぞれの需給要因に関心が戻ることになりそうだ。
小麦相場では、今回の大相場の火付け役となったミネアポリス穀物取引所(MGE)の硬質春小麦先物が週末8日まで7営業日連続のストップ高。これにつられてCBOTの軟質冬小麦先物は週末まで5営業日連続のストップ高と異例の展開が続いた。両取引所とカンザスシティ商品取引所(KCBT)は8日、値幅制限を11日から60セント(現行30セント)に引き上げると発表した。
今回のMGE主導の小麦相場高騰は、「主にパン用の高たんぱく質、高品質の硬質小麦の需給逼迫(ひっぱく)で、実需筋の買いが殺到した」(日系大手商社)ことがきっかけとされる。米国産の硬質赤色冬小麦の輸出先としては、日本も15%を占めるとされ、高値にもかかわらず日本が買い続けていることも相場高騰の一つの原因になっているようだ。
さらに、舞台がMGEという小さな市場だったことが相場過熱に拍車を掛け、ファンドも含めた目先的な投機筋も参入。売りヘッジをしていた実需筋が踏み上げられる形で手じまい買いを急ぎ、上昇にさらに弾みが付いた。
こうした動きは大豆やトウモロコシ市場にも波及し、「売りヘッジをしているカントリーエレベーターなどの中には、損失拡大による追い証拠金の差し入れに追いまくられ、資金繰りまで苦しくなってきているところも出てきている」(市場筋)との話まで聞かれる。
8日には米農務省の需給報告が発表され、米国、および世界の小麦の期末在庫は下方修正され、需給逼迫感をさらにあおる形になっている。現在は、連日のストップ高、史上最高値の更新がいつ止まるのか、値幅制限の拡大が功を奏するのかを見守るしかないとのムードだ。
トウモロコシは8日の需給報告では米国分の修正はなく、材料とはならなかった。
一方、今週、エタノールの使用目標を定めた再生可能燃料基準の適用が一時、延期されるのではとのうわさが流れ、穀物相場の高騰の犯人はバイオ燃料促進策だとのムードの高まりを象徴する形となった。今月21日に予定されている米農務省のアウトルックフォーラムの前までに、10年間の長期予測(旧ベースライン報告)も発表される見込みだが、その際、エタノール向け需要量の予測数字をどう作ってくるのかも大いに関心を集めそうだ。
また、小麦同様に今週、史上最高値更新歩調となった大豆の需給報告については、米国の期末在庫が下方修正された。ただ、予想通りでもあり、インパクトには乏しかった。むしろ、同報告で注目されたのは、大豆油のバイオディーゼル向けの需要が4億ポンド引き下げられたことで、エタノール以上に原料大豆高に伴う採算の一段の悪化にメーカーが苦しんでいる様子がうかがえる。